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地獄 8

突然のことに驚きを隠せない。 なんで、殴らない? 機嫌を損ねたんじゃないの? すごく混乱していたけど、背中をさする若頭の手に何故か落ち着いてしまって、呼吸はすぐに正常に戻った。 「…ふ、…ぅ」 少し落ち着いて、一息ついた時。 若頭がお粥をのせたスプーンを俺の口へ運んできた。 「…」 お腹がすいてる訳では無いけれど、食べないわけにも行かない。 少しだけ口を開くと、そこにスプーンが入ってきた。 「!」 …おいしい 丁度良い熱さにほのかに香る和の風味。 これなら空っぽの胃にも優しそうだ。 気持ちも少し…落ち着いてきたかもしれない。 「………。」 どちらが喋るということもなく、 カチャカチャと食器の音だけが響く。 空腹の極限状態にまでさせた奴にご飯を食べされせられるのは非常に不本意ではある、けど。 いつまたあの状態にされるかわからない状況で、食べないという選択肢はなかった。 この人の機嫌を損ねると、酷い目に遭う。 この人の望む行動をしないと、また調教される。 ごはん、食べれなかったら、死ぬ。 小さい頃でも、あんな極限の空腹を味わった事がなかった。死を身近に感じたし、ゆるゆると弱っていく自分が何よりも怖かった。

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