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地獄 10
勢いよくベッドに転がされた俺は、うつ伏せのまま体勢を変えることが出来なかった。
肩、が…っ
こめかみから伝う血に加えて、意識を飛ばすことすら許されない程の肩の痛み。
おそらく両方外されたのだろう。
両手はピクリとも動かない。
「ぁ…っは、ハッ…」
必死で呼吸を整えるが上手くいかない。
気づかないうちに体が震えていた。
若頭の足音が近づく度にそれは大きくなっていく。
逃げなきゃ。
本能でそう感じた。
震える足を叱咤し、体を起こそうとしたその時。
「っああああ…!!!」
右肩に、突き刺さるような痛みが走った。
「うるせえな…いちいち叫ぶんじゃねえよ」
先程自分で外した右肩を掴み、仰向けにされる。
「ッッ!!!!」
「…これ以上騒いだら殺す」
痛い。痛いけど声を出したら本当に殺されそうで怖い。
必死で歯を噛み締めたけど涙は止められず、ぼろぼろと頬を伝ってシーツに染み込んでゆく。
俺に馬乗りになった若頭は、シャツの隙間から手を這わせてくる。
「ヒッ…」
言い知れぬ恐怖が全身を駆け巡った。
こわい、こわいこわいこわい
逃げたい、逃げたいのに……
未だ頭から流れ出る血と両肩を外された状態では抵抗することすら出来ない。
「ぁ…」
俺の心が絶望に染まる瞬間、若頭の瞳にはうっすらと情欲が灯っている気がした。
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