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出会い 2
肩がグロテスクな色になっていて手が全く動かせない。
それを考慮してか、ペットボトルにはストローが刺さっていた。
「寝たままで大丈夫ですよ」
優しく微笑みながら話しかける男。
「…誰」
よくわからない人からは何も貰うなって蓮が言ってた。…お粥は例外だ。
俺の訝しげな目線に気づいても嫌な顔ひとつせず、ペットボトルを脇のテーブルに置いて向き直った。
「失礼致しました。私は夏目と申します。若…朝霧仁様から翠様の事は聞いておりました…」
少し伏し目がちになったその瞳は揺れている。
「…これからお会いすることが多くなるかと思いますので、どうかよろしくお願い致します」
丁寧にお辞儀までしてくれた男…夏目さん。
何故かわからないけど、すごく…優しそう。
そう、感じた。
「あ…えっと、翠、です」
こちらも一応自己紹介をしておく。
自分の本名を紹介するのは変な感じがする。いつもSと名乗っていたから。
「はい。よろしくお願い致します、翠様」
にっこりと笑った夏目さん。
「あ、お水飲めますか…?」
自己紹介が終わったところで再び水を勧められる。
水も欲しいけど、出来ることなら肩を治療して欲しい。あとこめかみ。
横たわりながらストローでゆっくりと水を吸う。本当にゆっくりだったけれど、夏目さんは俺に合わせてずっとボトルを支えてくれた。
「…先程医者を手配しました。あと少しで到着するそうなので、あと少しの辛抱です」
その言葉を聞いた瞬間。
ふぅ、とため息を着いたその瞬間。
ぽろりと涙がこぼれ落ちた。
「翠様…!?」
いきなり泣いた俺にびっくりしたのか、アワアワと軽くパニックになっている。
最近、ていうか今、すごく涙腺が弱くなった。
ここしばらく、人の温かさに触れていなかったからなのか。こんな、言葉ひとつで泣くほど脆くなっていたのか。
この状況が異常なせいだと頭では分かっているのに、
「…っ翠様…」
涙を止めることは、出来なかった。
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