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忍び寄る影③
コンコン
「…おはようございます。」
恐る恐るドアを開けた。
…途端に拍手と野次とで迎えられた。
「あそーだ しおーん!おめでとう!!」
「俺達を放ったらかして幸せになりやがってー!寂しかったぞっ!」
「コンチクショウ、羨ましいぜっ!」
中田部長を先頭にみんなが笑顔で俺の頭をわしゃわしゃと撫で、肩を叩く。
一頻り揉みくちゃにされて、やっと落ち着いて見渡せば、目の前の部長が涙ぐんでいる。
「ぶ、部長?どうされたんですか?」
「…俺と継…社長は幼馴染でな。
親友というか悪友というか…
『番を見つけた』って聞いた時はホントうれしかったし、相手がお前だってわかって驚いたけど『自然に出会いたい』なんて乙女チックなこと言うもんだから、みんなでそっと見守ってたんだ。
それにうちの柚月がえらく喜んでな…
とにかく…よかった。おめでとう!」
「ありがとうございますっ!
長い間お休みさせていただいて申し訳ありませんでした。
その分頑張りますのでよろしくお願い致しますっ!」
「じゃあ、早速この書類頼むよ。」
「あっ、部長ズルい!俺もっ、これお願い!」
「関さん、どいてー。俺が先っ!」
わらわらと我先に押しかけてくる先輩達の相手をしながら、みんなが受け入れてくれたことにホッとした。
でも…何処からかわからないが、開け放った窓から、嫌な匂いがしてくる。
嫉妬、怒り、嫌悪…そういった類のものが。
そういえば、さっき裏口とは反対の正面玄関からもそんな匂いがしていたような気がする。
よくあることなので、あまり気にも止めずに仕事に集中していると、それは間もなく消えてしまった。
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