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詩音の怒り④
「それもあるんだけど…
桐生君もさっき言ったけど…
あのタヌキが一人で画策できる話じゃないってことだよ。
あいつじゃそこまでの頭はない。
バックにもっとデカい奴が糸引いてる。
自分の名前を全く出さず、手を汚さずにのうのうと生きている奴が。
そいつが本当の黒幕…
それに偶然かもしれないが、攫われたΩはみんな、うちの機関にサンプルがある子ばかりなんだ。
金額を釣り上げるために、そういった『特別な』子ばかりを狙ってる可能性がある。
疑いたくはないが、内部に共犯者がいる可能性が高い。
そうなると、詩音君が囮というのは、相手に手の内を調べ尽くされてるのと同じことなんだよ。
それに交換されたチップに何か細工されていたらもうそれで終わりだ。
すぐにでも新しいものと取り替えた方がよさそうだね。
厄介なことだが、一つ一つ怪しい人物は潰していかないと。
詩音君の協力を願うのは最終手段だ。
100%証拠固めをして完全な包囲網を敷いて、煮詰めてからでないと、危険が大き過ぎる。
詩音君に何かあってからでは遅いんだよ、桐生君。」
難しい顔をして香川先生が一気にまくし立てた。
俺を抱きしめる継は鼻息も荒く、桐生さんを睨みつけている。
「…継…」
「…詩音は黙ってろ。」
「…継、俺」
「詩音…頼む、頼むから今は何も言うな。」
継の泣きそうな顔を見て、俺はびっくりして口を噤 んだ。
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