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詩音の怒り⑤

「…とにかく、詩音君が狙われてるのは確かなんですから警備の強化を頼みますよ、桐生君。 そして引き続き総動員で三ツ矢を張って下さい。 あの手合いは必ず増上慢に陥って尻尾を出しますからね。 特にあの娘。 嫉妬に狂ってすぐにボロを出すはずですよ。」 「…わかりました。 継、詩音君。 無茶なことを言って申し訳なかった。 SPも身元のしっかりした者を人選して当たらせるよ。 全力をあげて必ず突き止めてみせるから。」 じゃあ、と片手を上げて桐生さんが出て行った。 香川先生は 「俺は研究室の人間をもう一度調べてみる。 被害者があまりにも簡単に攫われてるのはおかしい。 内部の人間なら、GPSでスーパーΩの行動が簡単にわかるからな… 三ツ矢と通じてる奴がいるとしか思えない。 情けない話だが、疑ってかからないと… 継、わかってるだろうが詩音君のこと気を付けてくれよ。 チップ交換の件も早急にね。」 香川先生も足早に去って行った。 後に残ったのは継と俺だけ…いつ出て行ったのか、篠山さんは気を利かせて秘書室に戻ってしまったようだった。 継はずっと黙ったままで… 「…継、ごめんなさい。」 俺が謝っても何も言わない。 「…継」 無言で抱きしめる継の腕に力が込められた。 濃い花の香りに包まれる。 背中にそっと手を回すと、その広い背中が震えているのに気付いた。 「…詩音、詩音…頼むから危険なことはしないって約束して… お前に何かあったら、俺はっ…」 絞り出されるような、掠れた小さな声。

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