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襲撃①

そんなこんなで、その日は社長室にいたものの、仕事になったような、ならないような… 定時になったが、所用で出掛けた継はまだ帰ってこない。 篠山さんがノックして入ってきた。 「詩音様、お疲れ様でした。 社長はまだ時間が掛かりそうなので、ご自宅までお送りするように連絡がありました。お支度下さい。」 「えっ、大丈夫です。一人で帰れますから。」 「詩音様っ!今日の皆さんの話をお聞きですよね? 念には念を! 何かあってからでは遅いんですよっ! お願いですから、社長のおっしゃる通りになさって下さい!」 「…はい。わかりました…よろしくお願い致します。」 過保護過ぎるよ…そりゃあ、ちょっと怖いけど。大丈夫だってば。 そう思いながら車に乗り込んで、ふうっとため息をついた。 「…詩音様…」 「はっ、はいっ。何でしょうか?」 「余計なことで申し訳ありません…でも、一言言わせて下さい。 社長はもちろんですが、私達はみんな、大切なあなたを守ろうと一生懸命なんです。 どうか、どうか御自分をもっと大切になさって下さいね。 そして、あなたを想う、社長の気持ちもわかってさしあげて下さいね。」 初老の紳士の穏やかな声音が、少し不満に思っていた俺の心のささくれを癒してくれた。 俺は『麻生田 継』の番。心から大切にされてるのは身に染みてわかっている。 それに、今までとは立場が違う。 俺に何かあったら継に、会社にも迷惑がかかる。 「篠山さん…ごめんなさい。ありがとうございます。 俺…継が大切です!あ、篠山さん始めみなさんも!」 「それを聞いて安心しました。 私達は社長と同じように誠心誠意あなたに尽くさせていただきます。 不安なことがあれば何でも遠慮なくお申し付け下さいね。」 「篠山さん…ありがとうございます。」 優しい言葉に俺は泣きそうになったが、目に溜まる涙をぐいっと拭いて、真っ直ぐに前を見た。 やがて 「お部屋の前までお伴します。」 有無を言わさぬ言葉に頷いて、篠山さんとエレベーターに乗った。

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