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襲撃②
到着したエレベーターから降りて、数歩歩き出した瞬間
「詩音様っ!」
軽い衝撃を受けて気が付くと、床に転がっていた。
えっ?何っ?
目の前には俺を庇うように片膝をついた篠山さんと、パーカーを被り何かを手に持った男が対峙していた。
夕闇にキラリと光るそれは…ナイフ?
「詩音様…少し後ろへ行けますか?」
「はっ、はいっ。」
這うようにして少し距離を取った。
「少しおイタが過ぎるようですねぇ…」
篠山さんは胸からシャキンと警棒を取り出して身構えた。
きぇーーーーっ
奇声をあげて篠山さんにナイフを突き刺そうとした男は、呆気なくナイフを叩き落とされ、足を払われてもんどりうった。
ぎゃっ!
その背中を踏み潰し、男のベルトを抜き取ると後ろ手に巻きつけ、自分のネクタイを外すと鮮やかに足を拘束した。
男は意識を失っているのか、動かない。
息一つ上がらぬ体で男を足で押さえつけたまま
「詩音様、お怪我は?」
「お、俺は大丈夫です。篠山さんはっ?」
「私は大丈夫でございますよ。
さて、この輩の引き取りを願いましょうか。」
と冷静に何カ所かへ電話をしていた。
そして俺に自分のジャケットを羽織らせてくれた。
狙われた…殺されかけた?
やっぱり…
篠山さん…すごい…警棒持ってたよね…
一体、何者?ただの秘書じゃないよね?
思考回路はループし、俺は身体の震えが止まらない。
戸惑う間も無くすぐに警官が数人やってきて男を引っ立てて行った。
その中の一番偉いような人と篠山さんは何か話していたが、最後に警官が篠山さんに敬礼をして行ってしまった。
「詩音様、びっくりなさったでしょう?
社長も直にお戻りになります。
さあ、お部屋へ戻りましょう。」
と腰の抜けた俺を立たせて連れて行ってくれた。
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