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襲撃④
ギリギリと歯を食いしばり継が低い声で呟く。
「絶対に詩音には手出しはさせない。
覚えていろ…」
俺を抱く手に力がこもる。
「篠山さん…何かいい方法はありませんか?
このままでは済ませない。済ませられない。
第一に詩音の安全を確保したい。
お知恵を拝借できませんか?」
ふーむ…と篠山さんが腕を組んで考えている…
「娘が手を回しても今夜のような具合でしょうし、父親が絡むと尚更…どちらにせよ、詩音様に危害を加えることに変わりはないでしょうな…
とにかく警護の強化を進めるのが一番。
そして…いや…これは…」
言い淀む篠山さんを継が急かせる。
「篠山さんっ!」
「ふうっ…桐生君の案に乗って囮となり、三ツ矢親子とその黒幕達の犯罪組織を一網打尽にしてしまうか…
いや、これは危険すぎる…社長、申し訳ありません、聞かなかったことにして下さい。」
深々と頭を下げて謝罪する篠山さんに、継が何か言おうとするのを制して
「継、やっぱり俺…役に立ちたいですっ!
守られてるだけなんて嫌だっ!…怯えながら暮らすのも嫌です。
継は俺のことを守ってくれるって言いました。
だから俺は怖くない。
継が…俺のことを思っていてくれるなら、俺は何でもできます。
だから、だから…犯人捕まえましょう!」
「ダメだっ!何度言えばいいんだ?
犯人は俺達が何とかする。だから、お前は手を出すな!」
「継…お願い…お願いしますっ!」
そうだ!
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