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尾行!?⑦

何となくもやもやとする気持ちのまま、移動の車中で、今日の説明を受けた。 「昨夜さ、俺と詩音君の後から、継と伊織が付いてくる…って説明したよね!? 継は、ただでさえ目立つ顔に目立つガタイだから、『付いてくるな』って言ったんだけど、言うこと聞いてくれなくってさ。 一人で歩かせると他の女達が寄ってくるから、仕方なくて伊織を引っ張りだしたんだ。 俺の伊織は女装しても美しいよなぁ…あぁ帰ってからそのままベッドに押し倒して うっ…ぐふっ、ごほっ…痛たたっ! …痛いよ、伊織…ぐすっ… …まぁ、とにかく、手早く済ませるから、絶対に目立つ行動は取らないように! 継、わかったな!?」 「わかってますよっ! 俺の詩音だって…もう、天使ですよっ! いや、女神だっ!!」 「継…恥ずかしいから、もう止めて…」 暴走気味の二人のαの夫達に呆れつつも、一つ目の調査場所に到着した。 「ここからは二手に分かれて行くからね。 一応、SPは付いてるけど油断しないように。 さぁ、詩音君!今から俺達は恋人同士だからね!」 途端に継のこめかみがピクッと動いた…ような気がした。 ピリピリとした匂いを後方に感じながら、香川先生の言う通りに腕を組んだ。 空気が痛い。 継から漂う匂いも痛い。 チラチラと後ろを振り返り見ると、継の顔が怖い。 継、これは仕方ないよ…俺だって、継以外の人となんて嫌なんだ。 何だか頭が痛くて気持ち悪くなってきた。 それに 伊織さんと並んだ継は、美男美女の最高にお似合いのカップルで、ため息が出る。 俺なんか…継の横にいても見劣りして… 継、どうして俺なんか選んだの? だんだん悲しくなってきた。

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