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仲直りは…④
「明日こそ、お義兄さんの店に行くぞ。
先に連絡はしておいたんだ。理由もちゃんと伝えて。
あぁ、もう、こんな時間か…もう、外に行く元気もないだろう?
簡単に何か作るから待ってて。」
「…俺がします。」
「俺に任せろ。詩音は座ってて。」
俺を翻弄する愛おしい夫 。
泣きすぎて腫れた重い瞼をこじ開けて、継を見つめる。
ふっと微笑まれ、リップ音付きのキスをされた。
「泣き虫だなぁ、詩音は。
そこがまた愛おしくってかわいいんだけど。
あぁ、俺が泣かしたんだったな。」
ごめんごめんと何度も頭を撫でられ、いつの間にか、胸につかえていた不安や恐怖や、いじけた心が少し消えているのに気が付いた。
「…継は意地悪です。」
やっとの思いで口にすると
「嫌われても離さない。お前は俺のものだ。」
鼻先をちょんと突かれ笑われるが、黙って涙目で抗議する。
そんな俺を愛おしげに見つめて
「簡単に作ってくるから、待ってて。」
と言い残し、キッチンへ行ってしまった。
継が立ち去った後には、甘く狂おしい残り香が…。
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