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jealousy④
「ん?そうだね…俺を心から愛してくれる運命の番と出会えたから、幸せかな…」
「アレですか?」
「そう、残念なことにアレだよ!ふふっ。
それより…心配なのはね、今、ああやって詩音君が腕組んでるけど、反動が出なければいいなってことなんだ。」
「反動?」
「俺達Ωはね、番ができると、番以外の人間に触れたり触れられたりすると、多かれ少なかれ拒否反応を起こすんだ。
俺もそれが酷く現れる方だから、今、君とは少し距離を置いて行動してる。ごめんね。
その度合いは人によって違うんだけど。
軽い人もいれば、中には体調を崩して入院する人もいる。
詩音君は…俺と同じくらいに酷そうな気がする。
さっきから後ろを振り返っては、泣きそうな顔してるし。
それなのに、あのバカはベタベタしやがって…。研究者のくせにそんなことも気遣ってあげられないなんて。浮かれて調子に乗りやがって。
詩音君は、継君と俺が一緒に並んでいるのを見るのも辛いんだと思うよ。
番が自分以外の人と仲良さげにしてるだけで辛いんだ。
だから、これが終わったら、詩音君が望むようにしてあげてほしいんだ。
大切に、愛おしんで…抱きしめてあげて。」
「わかりました。
でも、俺は今すぐにでも抱きしめたいんです。」
「あはっ、ご馳走様!
さぁ、あと少し。もうちょっとだから我慢してね。」
「はいっ!
伊織さんもこんなことに巻き込んで申し訳ありません。」
「俺は…あの人と一緒にいるって決めた時からこんなんだから。
惚れた弱み?仕方ないよね。」
ふふっ と口元を手を当てて笑う伊織さんは、少し悲しげで、とても神々しかった。
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