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jealousy⑥
助手席のドアを開け詩音を降ろそうと声をかけたが、思いっきり『嫌だっ!』と叫ばれた。
どうした?こんな詩音は初めてだ。
全身で、匂いで、俺を拒否している…ショックだ。
それでも横抱きにして無理矢理部屋へ連れて行く。
泣き続ける詩音をソファーに座らせると、そっと抱きしめた。
「詩音…ごめん」
硬直した詩音の頭を撫でて呟いた。
詩音から悲しみの匂いが溢れかえっている。
俺の大切な番をこんなにも辛い想いをさせてしまっているなんて。
「ごめん。一日中アイツに嫉妬してた。
あんなかわいい詩音をずっと独り占めして、挙句に腕まで組みやがって。
俺が後ろからどんなにイラついて、あの野郎に飛び蹴りくらわそうとしたか…
その度に伊織さんに止められてたんだけど。」
詩音から困惑の匂いがしてくる。
流れる涙を舌で舐めとって頭を撫でてやる。
ひたすら謝って許しを請う。
詩音は、泣きながら一生懸命に自分の想いを打つけてくる。
『俺は、俺は…『お疲れ様』って…頭を撫でてもらうだけでよかったのに…』
あぁ、俺の大切な番は、何て健気でかわいいんだ!
胸がキュンキュンして止まらない!
俺の愛情が足りないせいで、離婚まで考えが飛んでたなんて!
ごめんよ、詩音。
こんな器量の狭い男で。
泣いている詩音を力一杯抱きしめる。
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