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jealousy⑦

αを輝かせその能力を最大限に発揮させるΩ。 Ωがいなくなれば必然的にαもいなくなる。 番のΩって、契りを結んだαのためだけの愛おしく繊細で優しい存在なんだな。 何ていじらしい。 俺のためだけの詩音。 そうだ。 詩音がいなければ俺は俺じゃなくなる。 もう、詩音なしでは生きられない。 詩音は俺の生きる糧だ。 そんな大切な伴侶が傷付いているのに、優しい言葉もかけてやらず抱きしめもせず、俺は一体何をやってたんだ… 慣れぬヒールでできた擦り傷に絆創膏を貼ってやる。 ご飯も作って食べさせたけれど、詩音の匂いはまだどこか余所余所しい。 風呂に誘っても即答で拒絶された。 諦めて一人で入る。 寂しい。切ない。 俺が出るのを見計らって顔を合わせないようにされた。これは…結構キツかった。 ふと、リビングのクッションを見ると、色が変わっている。 あぁ…これを抱きしめていたから…涙の跡か… こんなに苦しめてしまうなんて。 いくら詩音のためだとはいえ、引き受けるんじゃなかった。 俺以外の奴にベタベタと触られて、どんなにイヤな思いをしたのか。 時々振り向いては辛そうな顔をしていた詩音を思い出した。 ごめん、ごめんな、詩音。 先にベッドで横になって詩音を待っていた。 遠慮がちに布団に入ってきたが、端っこに行ってしまった。 そのうち、嗚咽が聞こえ…ドアの開閉する音がして、慌てて飛び起き後を追った。

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