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小さなすれ違い①
side :詩音
あれほど性欲をそそったフェロモンは、今は穏やかで安らぐ香りへと変わっていた。
存分に仲直りをした俺達は、ベッドの上でぴったりとくっ付いていた。
継は腕枕をしたまま、俺の腰に手を回し足を絡ませ、そのせいで俺は継に思いっきり抱きとめられ、胸元から香る濃い匂いに満たされていた。
事後の気怠さに身を委ね、うとうとしかかったが、この体勢では継が痛いだろうと
「継、離して下さい。これでは継がゆっくり休めません。」
「俺はこのままがいいんだ。
ほら、ごちゃごちゃ言ってないで、俺に埋もれて眠れ。」
「でも…」
ふっ と笑う継は、固く大きくなったモノを押し付けながら言った。
「…文句言えないくらい、意識飛ばすまで…抱き潰そうか?」
ひえっ
「いいです!このままで、いいですっ!」
腰を引きながら首を横に振ると
「いいから、来い。」
と、また抱き寄せられていた。
先程よりも更に脈打つ熱い塊を押し付けられ、身動きできないほど抱きしめられ、俺はどうしていいのかわからず ただ身を竦めてじっとしていた。
程なく大きなため息が聞こえ
「詩音…そんなに力を入れていたら眠れないぞ?
俺のこと…怖いか?」
え?
「…『怖い』って…どうして?」
「お前から怯えの匂いがする。」
「俺は…本当はこうやって心地よさに身を任せていたい…でも、ただ継の体勢が辛いと思って…
それなのに継が…『抱き潰す』って言うし。
それに…
熱くて固くて大きいのが密着して…その…」
「…チッ…またそうやって無自覚に煽る。」
そう言うと、噛みつくようにキスしてきた。
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