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危険な匂い①

右手に輝く俺達夫夫の証が照れ臭い。 ただの金属の輪っかが、これだけ影響するなんて思いもよらなかった。 うれしくて何度も見つめ、親指で触ってその存在を確認しては、知らず知らず口元が緩んでいた。 「おーい、麻生田君!何にやけてんの? いいねぇ、新婚さんは。 俺も早く結婚したーい!」 「そっ、そんなっ!にやけてなんかいませんよっ!揶揄わないで下さい! そんなことよりあの書類、明後日締め切りですから。 遅れたら俺でもフォローのしようがありませんからね!」 「うおっ、そうだった!ヤバい! ありがと麻生田君!急いで出すから頼むよ!」 バタバタと走って席に着く関さんにハッパをかけて、自分も山と積まれた書類の整理に取り掛かった。 今日はどうしてもこれを処理しないと。 集中してやれば午前中には片付くな… 幸い、継からのラ◯ンもメールも今日はまだない。 継にはすぐ返信しないと、心配してここまで来てしまうから、仕事中の手を止められてしまうことがあった。 ちょうど全ての書類を片付けた頃、昼休憩のチャイムが鳴った。 よかったー! 何とか間に合った…ホッとして携帯に目をやると、ちょうど継からの電話があった。 「はい、詩音です。」 「あ、詩音?午前中電話できなくてごめんな。 まだ帰社してないから、先に昼ご飯食べててくれ。 俺は戻ったら食べるから。」 「はい。わかりました。継、お仕事頑張って下さいね。」 「ありがとう。じゃあ、後でな。」 ちゅっ というリップ音がして電話が切れた。 うわっ、恥ずかしい…

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