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危険な匂い④
篠山さんにも電話した。
優秀な秘書は、一言だけで全てを理解し、俺にハッパをかけた。
「こちらのことはお任せ下さい。
社長、気をしっかりと待つんですよ。
詩音さんを助けられるのはあなただけですっ!」
電話を切って奮い立った。
しっかりしろ、継!
お前がしゃんとしないと、詩音は…
携帯が鳴り響いた。
香川先生!
「先生!詩音がっ!」
「大丈夫だ、継!落ち着け!
桐生君達が向かってる。
彼らが目星をつけてた関係者も一斉に動き出したらしいぞ。
内偵捜査が功を奏したな。
黒幕も動き出してる。
どうやら詩音君は、奴らにとって格好のターゲットらしい。
心配するな。
絶対に助けよう!
俺は…悪事に手を染めたこちら側の協力者の証拠を全部押さえたから!
俺もそっちに向かうよ!」
「先生…お願いします…」
それだけ言って電話を切った。
両頬をパンと叩いて気合いを入れ直す。
こんな白昼堂々と正面玄関から攫っていくなんて。
パソコンの画面を食い入るように見て、大橋君に指示を出す。
また着信が。
中田だ!
「社長!詩音君が!」
「わかってる。追跡中だ。
社内のことは篠山さんに任せてあるから、協力して対処してくれないか?」
「わかった!こっちのことは任せてくれ!
継、しっかりな!」
「ありがとう…頼むよ…」
みんなが手を貸してくれてる!
詩音、待ってろ…
必ず、必ず助けてやるから…
頼む、無事でいてくれ…
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