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危険な匂い⑤

どのくらい走ったのだろうか… 途中でそのマークが二手に分かれていく! どうして?どういうことだ? 元々詩音の身体に埋め込まれているものが右折。 結婚指輪とネクタイピンに仕込んだものが左折。 すぐに香川先生に電話した。 「先生! 詩音の本体のGPSが右折、俺が仕込んだ指輪とネクタイピンのGPSが左折、 一体どういうことですか? まさか、まさか詩音は…」 絶句する俺に先生は 「仕掛けをしてたのか!? でかしたぞ、継!知らなかったな、いつの間に? …もしかしたら、本体の方は遠隔操作されてるのかもしれない。 研究室のメインパソコンからだけ操作できるんだ。 そしてそれができるのが…アイツしかいない。 俺は研究室に向かってるから、絶対に現場抑えて取っ捕まえてやる! 詩音を攫った奴らは、お前のGPSのことを知らないはずだ! お前が仕掛けたものの方が正しいよ! 継、指輪の方を追うんだ! 桐生君?桐生君、聞こえてる?」 「はい、先生!バッチリと! おい!立浪班は右、俺達は左。行くぞっ!」 バイクと車の加速する爆音が聞こえた。 「継、捕まえたら一発殴らせてやるから、楽しみにしとけよ!」 「殴るくらいじゃ済まない。蹴りも加えてくれ。」 「わかったよ。オプション付きでな!」 悪友の冗談に肩の力が抜けた。 『万が一のために付けときますか? 俺はこっそりと仕込んでますよ』 お義兄さんの一言が、指輪とネクタイピンにGPSという安全の保険を掛けさせる決め手となった。 お義兄さん、ありがとうございます… 絶対に詩音を守りますから… 心の底から感謝した。

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