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脱出①
どのくらいの時間が経ったのかはわからない。
しばらくしてドアが開いた。
男達が数人、入ってきたようだった。
瞬間、身体が硬直する。
ベッドの端に腰掛け俯く俺の頭上から声がした。
「おや、お目覚めだったかな、お姫様?
今から決まる新しいご主人様へお披露目だから、暴れるんじゃないぞ。
怪我をさせたくないからな。」
かちゃかちゃとベッドに繋がれたチェーンが外される音がしたと思ったら、いきなり両手首を掴まれて手錠を掛けられてしまった。
「触るな!」
叫んでも何の足しにもならないのはわかっている。
男は卑下た薄ら笑いを浮かべながら言った。
「さあお姫様、楽しいショータイムの始まりだよ。
存分に愛想を振りまいて高く買ってもらうんだな。」
全身に鳥肌が立った。
吐き気がする。
屈強な男達が両脇に近寄り、そんな俺を引っ立てて、別室へと連れて行った。
手足をばたつかせてもビクともしない。
何もない部屋に押し込まれた。
黒いスモークのかかった窓ガラスが一枚。
おそらくあちら側から俺を見定めているのだろう。
俺は真正面からそのガラスの向こう側の奴らを睨み付けた。
ふざけるな。
お前達の勝手にはさせない。
今まで何人のΩがここに連れてこられたのだろうか…
金儲けと己の欲のためだけにこんなことをするなんて…絶対に許せない!
いつの間にか、怒りが恐怖を上回っていた。
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