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脱出②
どうやったら逃げられるのか
もう、俺の頭に浮かぶのはそれしかなかった。
出入口は一つのみ。
両手首には手錠。
この状況でどうやって…
どこかへ連れて行かれるその隙を狙って。
もう、その選択しかないかもしれない。
俺はドアを見つめ、開かれるのを今か今かと待っていた。
がちゃり
ドアが開いて入ってきたのは…
宮原!?
手に何かを持っている。
注射器!?
さっき『薬』と言っていたのはこれか!?
マズい。
そんなもの打たれたら、相手を継だと思い込まされてしまう!
蹴り上げて壊してしまえばいいのか…
「あぁ、怖がらなくてもいいよ。
新しいご主人様のために、君を楽にしてあげるんだから。」
「…どうして、どうしてこんなことを?
あなたはΩの味方ではなかったのか?」
喉が張り付いて掠れ気味の声で尋ねると
「味方?はははっ…誰が味方だって!?
ΩはΩじゃないか!
Ωはαのために役に立てばいい。
それだけの存在だ。
それを利用して何が悪い?」
「…今まで何人のΩをこうやって拉致してきたんだ?
一体何人のΩを不幸にしたんだ?」
「はぁ?そんなの一々覚えてるわけないじゃないかっ。
不幸?
快楽を与えてやってるのに、何が不幸だ?
Ωのくせにっ。」
ブチッ
キレた。
その一言で俺の中の何かがキレた。
「Ω、Ω、Ω…Ωが何だっていうんだよ。
Ωの何が悪いっ!?
好きでΩに生まれてきてるわけじゃないっ!
お前達の好き勝手になんかさせるもんかっ!!」
「あはははっ。気の強い仔猫ちゃんだ。
躾のしがいがあるというもんだ。
さあ、大人しくこっちにおいで。」
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