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脱出③
「黙れっ!近付くな!」
「いい子だからじっとしてろよ。」
宮原がニヤつきながら、じりじりと間を詰めてくる。
気持ち悪すぎる臭いが部屋中に充満していた。
吐きそうだ。頭痛も酷い。
いや待てよ…もう少し…もう少し近付けば、足が届く。
そうすれば…蹴り倒す自信はあった。
護身用と称して、少しばかり古武術と空手をかじったことがあったからだ。
こんな優男一人ならば何とかなるかも。
怖がって動けないフリをして腰を落とし、タイミングを計っていた。
案の定、気を許した宮原が近付いてきて、油断した瞬間を見逃さなかった。
ガツッ!ガシャッ!!
バーーーン!!
伸ばしてきた腕を蹴り払い、その勢いで落ちた注射器を踏み潰すと、見る間に中身は絨毯に染みていった。
立て続けに勢いを付け、首に回し蹴りを食らわせると、宮原は壁に吹っ飛んで行った。
頭でも打ったのか、宮原はピクリとも動かない。
やった!
とりあえず薬は阻止した。
おそらく今の様子を見ていたであろう、さっきの男達が来るはずだ。
俺は咄嗟にドアに駆け寄ると、死角になる壁側に張り付いた。
「先生!?」
飛び込んできた男達が宮原に駆け寄る隙に、そっと外へ抜け出した。
外からしか掛からない鍵を施錠すると、一目散に出口へ向かった。
隣の部屋からは騒ぎ声が聞こえていた。
廊下に飛び出すと非常階段を探す。
あった!
もつれそうになる足を必死で動かして、階段を駆け降りる。
とにかくホテルの外へ!
上から怒鳴り声と追いかけて来る足音が聞こえてきた。
急がなければ!!
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