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脱出⑥
「まどろっこしくて待ってられるわけねーだろっ!」
ドアに手を掛けたその時
二億!
二億五千!
「…他にいらっしゃらないですか?
では…二億五千万円で、浅田様の落札が決定いたしましたっ!!
ありがとうございます!
残念ながら外れた皆様、次回の開催をお楽しみに…」
ほぉーっ という会場中のため息ともどよめきともつかぬ声と
億は出せないよなぁ…
流石大飛躍中の社長は違うよなぁ…
何と羨ましい…
あんなΩを…手に入れたかった…
悔しいなぁ…
嫉妬と賞賛の声があちこちから上がっているようだった。
「それでは皆さま、帰りもどうぞお気を付けて。
くれぐれも尾行されたりすることのないように…いつものように時間差でご退出下さい。」
ざわめく会場。
浅田?
あの超大手のIT企業の社長?
もう、許せん。
怒りが頂点に達し、身体が震える。
「そこ動くな!!!警察だっ!
言い訳は聞かない!
全員現行犯逮捕だ!
令状も取ってある!
おい!確保だ!!!!!」
桐生の声!やった!
詩音、今行くぞ!
飛び出そうとしたその瞬間、また桐生から。
あー、もう、お前の言うことなんか聞くもんか!
飛び出して走りながら
「もしもしっ?俺も今そこに行く!」
「待て!継!詩音君が脱出した!
非常階段を駆け降りてる!
お前、一階で受け止めろ!
急げ!
あとを追ってるヤツがいるぞ!」
「わかった!!!!!」
俺は猛ダッシュで非常階段へ向かった。
詩音、待ってろ!
今行くからな!
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