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脱出⑧

side :詩音 怒髪天を突く勢いで飛び込んできたのは… 継!?うそ…本当に!? 怒りのオーラと匂いが頂点を超えている… こんな継、初めて見た。 どんなαでもひれ伏す、αの王と呼ばれる絶対的α。 圧倒的な存在感に男達が尻込みしていた。 「詩音の匂いがする… 詩音はどこだ? 詩音を出せっ!!!!!」 凄まじい怒りに恐れをなしたのか、男達が震えながら、一斉に俺の方を指差した。 男達が指差す方をゆっくりと向いた継は、目を大きく見開き、くしゃりと顔を歪ませると、俺に飛び付き抱きしめてきた。 「詩音…詩音…詩音…」 「継!継!…うっ、うくっ…うっ」 ただ、ただ…抱きしめ合って名前を呼び合うことしかできない。 抱きしめられ、大好きな懐かしい匂いに包まれて、俺は継の腕の中で動くことができなかった。 バァーーーン! 大きな音を立ててドアがまた開いた。 「警察だ!お前ら動くな!確保っ!! 抵抗しても無駄だぞ!」 この声…伊織さん!? 伊織さん、警官??? 「警視!ここにいる奴らは全員確保致しましたっ!」 「先に連行してくれ。まだ仲間がいるかもしれない。 館内徹底的に調べろ。」 「はいっ!おい、行くぞっ!」 ぞろぞろと男達が連れて行かれた。 一瞬にして静かになったその場所で、継と俺は抱きしめ合ったまま、伊織さんをガン見していた。 「…伊織さん?」 「詩音くーーーん!!」 べりっと継から引き剥がされた俺は、伊織さんにぎゅうぎゅうと抱きしめられた。 横を見上げると、苦虫を潰したような顔の継が、俺を抱いていたままの身体の状態でフリーズしていた。

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