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脱出⑨

伊織さんは俺の頭を撫でながら 「怪我は?何もされてない?大丈夫? あぁ…無事でよかった…今、この手錠外してあげるからね!」 俺は伊織さんにされるがままに、ようやく自由になった手首を摩りながら尋ねた。 「伊織さん?どうしてここに?警視って…」 伊織さんは、うふふっ と悪戯っぽく笑うと 「うん。桐生君の上司に当たるんだ。 俺はΩだから…いつもはデスクワーク専門なんだけどね。 今日は居ても立っても居られなくって、陣頭指揮取ってたんだよ。 あ!ごめん、継君…詩音君お返しするね。」 継の不穏なオーラを感じたのか、伊織さんは俺をそっと継に戻すと、継は二度と離さないとでもいうように、ガッチリと抱え込んだ。 「…いくら伊織さんでも…あんまりだよ… 俺の詩音なのに… あぁ詩音、詩音…無事でよかった…」 ぽろぽろと大粒の涙を零し、俺にキスしながらブツブツ文句を言う継に、伊織さんは 「ごめん、ごめん!」 と笑いながら謝っていた。 きっと悪いなんてこれっぽっちも思ってないんだろう。 他人の目の前でキスされている羞恥心なんかどこかへ行って、俺も泣きながらその行為を心地よく受け入れていた。 と、伊織さんが、突然インカムに向かって 「そうか!よくやった! 現行犯逮捕! 向こうの方も?よし、それぞれ連行してくれ。 今から忙しくなるぞ! マスコミ対策の方も頼んだよ。」 俺達の方に向き直ると、サッと敬礼して 「お二人の多大なるご協力により、犯人を全員無事に逮捕することができました。 本当にありがとうございました! 詩音君、無事で…本当に無事でよかった…」 伊織さんの目に涙が光っている。

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