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脱出⑩
バーーーーーン!
ドアが開くと同時に次に飛び込んできたのは…
香川先生!
「伊織ぃーーーーー!
詩音くーーーーーん!
あぁ、継、間に合ったか!
よかったぁーーーーーー!!!!!」
そう叫ぶなり、伊織さんを引き寄せ、俺達三人纏めて抱きついてきた。
「…俊哉さん、痛いです。」
「伊織ぃ…君もお手柄だったね。
あぁ…スーツ姿もステキだ…このままちょっと帰りにホテ…うっ、ごほっ、痛たたっ…」
「…離して下さい。」
相変わらず安定のツンデレ。
伊織さんはやっぱり伊織さんだった。
「…痛たっ…
それにしても継、お前のお陰で解決したようなもんだ。
よく仕掛けてたな。それがなければ今頃どうなっていたか…」
仕掛けてた?何を?
そうだ…どうして継や警察がここにいるんだろう。
「お義兄さんのお陰だよ。」
「えっ?どういうこと?」
「お義兄さんとこもスーパーΩで心配だから、指輪にGPSを仕込んでるって。
俺はそれでも不安だったから、ネクタイピンにも細工したんだ。
だから、そのお陰で…感謝しても仕切れない。」
「そうだったんだ…」
「詩音君…危険な目に遭わせて、本当に申し訳なかった。
俺がもっと早くに見つけていれば、こんなことには…申し訳なかった…」
「いいえ!皆さんのお陰でこうやって無事に戻ることができたんです。
本当にありがとうございました!」
香川先生の腕の中から、継に引っ張られて抜け出していた俺は、隙間もないほどに継に抱きしめられ、甘やかな香りに包まれていた。
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