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安堵①

ホッとしたと同時に、また恐怖が蘇ってきた。 これは夢?現実? 俺は本当に助かったのだろうか? 薬を打たれて、抱きしめている相手を継だと思わされているのでは? このまま騙されて、落札した奴に今度こそどこかへ連れて行かれるのではないだろうか… そして 身も心も汚された挙句、殺されて、いや、自らの命を… 俺は継の腕の中で、甘くたおやかな香りに包まれていたのだが… 不安で怖くて…助けられたことが信じられなくて… もしも、もしも継じゃなかったら… ぞわっと鳥肌が立った。 自分でも気付かぬうちに、ぶるぶると震えていた。 「詩音?詩音、どうした?」 心配そうに俺の顔を覗き込んでくる継。 「継?あなたは本当に…継? 俺…薬を打たれて、継だと思わされてるのでは?」 「詩音?俺だ!間違いなくお前の夫の麻生田 継だっ! しっかり俺を見て、俺に触れて、俺を感じてくれっ!」 そう叫ぶ彼は、確かに俺の継。 大好きなこの匂いも。 幻覚?俺、おかしくなった? 俺は思いっきり息を吸い込んだ。 目の前の男性は確かに継の顔で、匂いも間違いなく継の匂いだ。 「詩音!詩音!?お前は…俺の元に戻ってきたんだよ! 俺を信じろ! 先生っ!香川先生!詩音が、詩音がっ!!!」 震える俺を抱きしめて継が叫んでいる。 「詩音君?俺がわかる?」 「…香川先生…」 「詩音君、俺は?」 「…伊織さん…」 「じゃあ、君を抱きしめているのは?」

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