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トラウマ⑤
お腹も心も満たされて、社長室を後にした。
今日の晩ご飯は何にしよう…
冷蔵庫に何があったかな…
継、定時に帰ろうって言ってくれたし、ご飯も早く食べて、それから…それから…
いやいやいや、まだ仕事が残ってるから!
ぶんぶんと首を振って、邪な考えを振り解いた。
デスクに戻って、残りの仕事に取り掛かった。
16時前には ほぼ片付き、ホッと一息ついた。
うん、これで大丈夫。
とそこへ
コンコン
ノックの音とともに現れたのは…
「こんにちは。お仕事中ごめんね…マサと待ち合わせしてて…」
「柚月さん!!お久しぶりです!
うわぁ…大志 君!大きくなりましたね…」
柚月さんの胸に抱かれた大志君は、ぐっすりと眠っていた。
「お祝いもありがとう。気を遣わせてしまってごめんね。
でも、すごくうれしかった。ありがとう。」
「いいえ。喜んでいただけたなら俺もうれしいです。どうぞ。」
椅子を勧めてお茶を入れる。
「かわいいなぁ…赤ちゃんがいる生活ってどんなんですか?」
「うーん…この子を中心に回ってるって言うか、ドタバタしてると言うか…日々充実してて楽しいよ。
泣きたい時もあるし、投げ出したい時もあるけど。
でも、この子の寝顔や笑顔を見てると、幸せだなって思うんだ。
愛する人の子供を産めてよかったって…」
「柚月さん…Ωでよかったって思ってますか?」
「うん。俺はマサに出会えて愛し合って、大好きな人の子供も授かったから…今はΩでよかったって思う。
詩音君にも大きな幸せが来ますように…」
「ありがとうございます。」
柚月さんと大志君は、ダッシュで帰社した部長と、にこやかに帰って行った。
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