176 / 829

トラウマ⑤

お腹も心も満たされて、社長室を後にした。 今日の晩ご飯は何にしよう… 冷蔵庫に何があったかな… 継、定時に帰ろうって言ってくれたし、ご飯も早く食べて、それから…それから… いやいやいや、まだ仕事が残ってるから! ぶんぶんと首を振って、邪な考えを振り解いた。 デスクに戻って、残りの仕事に取り掛かった。 16時前には ほぼ片付き、ホッと一息ついた。 うん、これで大丈夫。 とそこへ コンコン ノックの音とともに現れたのは… 「こんにちは。お仕事中ごめんね…マサと待ち合わせしてて…」 「柚月さん!!お久しぶりです! うわぁ…大志(たいし)君!大きくなりましたね…」 柚月さんの胸に抱かれた大志君は、ぐっすりと眠っていた。 「お祝いもありがとう。気を遣わせてしまってごめんね。 でも、すごくうれしかった。ありがとう。」 「いいえ。喜んでいただけたなら俺もうれしいです。どうぞ。」 椅子を勧めてお茶を入れる。 「かわいいなぁ…赤ちゃんがいる生活ってどんなんですか?」 「うーん…この子を中心に回ってるって言うか、ドタバタしてると言うか…日々充実してて楽しいよ。 泣きたい時もあるし、投げ出したい時もあるけど。 でも、この子の寝顔や笑顔を見てると、幸せだなって思うんだ。 愛する人の子供を産めてよかったって…」 「柚月さん…Ωでよかったって思ってますか?」 「うん。俺はマサに出会えて愛し合って、大好きな人の子供も授かったから…今はΩでよかったって思う。 詩音君にも大きな幸せが来ますように…」 「ありがとうございます。」 柚月さんと大志君は、ダッシュで帰社した部長と、にこやかに帰って行った。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!