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トラウマ③side :継
「継、お疲れでしょうから、お風呂どうぞ。」
「いや、詩音から…俺は仕事が残ってるから先にそれを済ませる。」
「…わかりました。ではお先に。」
詩音がバスルームに入った瞬間、俺は伊織さんに電話を掛けた。
頼む、すぐに出てくれっ!
「はい、もしもし?継君?どうしたの?」
「伊織さんっ!助けて下さいっ!
俺、やらかしましたっ!」
「…詩音君を傷付けちゃったのね?
あれだけ言っといたのに…」
「うっ…弁解のしようもありません…」
「ただでさえ自己否定の塊なのに、あんな事件に巻き込まれて、正常な精神状態じゃないんだよ。
例え表面上は変わらなくても。
ひょっとして…Ωを否定するようなこと…言った?」
「…はい。多分。
『そんな甘い匂いで誘っといて』って…」
「あー…普通の時ならまだいいけど、今の状態ではそれは禁句だよ…
で?詩音君は?」
「車から逃げ出したのを捕まえました。
ずっと声も出さずに泣いてて…帰宅してからは泣き止んで、すぐご飯の用意をしてくれて、一緒に食べて、あ…二口しか食べなかった…今は風呂に入ってます。」
「…匂い、出てないでしょ。」
「何でわかるんですかっ!?」
「…継君、そうなったら時間かかるよ。
それ、多分『番 拒否症候群』だと思う…
キスとハグはいいけど、セックスはダメ。
自己否定MAXだから、挿入禁止。
しばらく我慢して。」
「『番拒否症候群』???…えっ…禁止って…何でですか??」
「後でちゃんと調べて!
何でって…Ωの一番嫌な部分を思い出すから。
詩音君、壊れかけてる…というか、もう、壊れてる。番の匂いがしない時点で、もう…
継君、君でしか元に戻せない。覚悟して。」
何てことだ…俺が詩音を壊した!?
“仲直りのセックス”が効かない…
ってか、できない?????
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