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トラウマ④side :継
「伊織さん、俺っ、どうしたら」
「二人の時は、ひたすら抱きしめて言葉にして愛してあげて。
何かしてる時は気が紛れてるから、大丈夫。
ご飯も食べさせてあげて。
お風呂も入れてあげるの。
眠る時は抱きしめて。
経験がないからわかんないだろうけど、子供を育てるように愛情込めてしてあげてね。
時間が掛かるかもしれないけど、継君しかできないから。
あなたがしっかりしないと、詩音君、このままだよ!
本気で愛してるなら、覚悟決めてやりなさい!!」
「…はい、ありがとうございます…では…失礼します…」
詩音が風呂から上がった気配がして、電話を切った。
俺は急いで詩音の元に駆け寄ると、驚く詩音を制して、そっと身体を拭き始めた。
詩音は…最初抵抗するそぶりを見せたものの、俺のなすがままに身体を任せてくれた。
髪の毛も乾かした後、横抱きにしてベッドへ連れて行った。
「俺も入ってくるから。
そうしたら、抱きしめ合って寝ような。」
優しく頭を撫で、額にキスをした。
俺が慌てて風呂から上がると、詩音は大人しくベッドで横たわっていた。
俺はそっと後ろから詩音を抱きしめ
「お休み、詩音。愛してるよ。」
と告げると、伊織さんの言いつけ通り手を出さずに、ひたすら愛してるとささやいて頭にキスをした。
目の前に愛する伴侶がいるというのに、手を出せないなんて何て拷問なんだ。
『挿入禁止』って…はっきり言うよな…
それでも、俺が招いたことだから。
俺がもっと大人になれば、詩音をいたずらに傷付けなくてもすむのに。
ごめんな、詩音。
愛してるよ。
しばらくすると、小さな寝息が聞こえてきた。
頬をそっと触ると冷たいものが…涙!?
チクリと棘の刺さった胸を戒めて、改めて詩音を抱きしめると目を瞑った。
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