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トラウマ⑦side :継
子供…子供…俺達の子供!?
「中田っ!本当か?それ、本当に!?俺と詩音の子供がっ!?」
「継、落ち着けって!そうじゃないって!」
「…そうだよな…そんな訳ないよな…」
「思い詰めてたようだったって。
柚月が『もしかして、Ωである自分を責めてるかも』って。」
あぁ…それに追い打ちをかけたのが俺なのか…
がっくりと項垂れて、涙目になる俺に
「お前、考えなしでぽろっと言っちゃう時あるからな…
もし、柚月の言ってることが当たってるなら、詩音君は心に蓋をして鍵を掛けて、本心を見せなくなるぞ。
なぁ、番の匂い、するか?」
「…しなくなった…」
「…あーぁ…全く?」
「…悲しみの匂いしかしない…」
「…なんてこった…継…はぁっ…ちょっと待って。柚月に聞いてみる。
あー、柚月?うん、俺。愛してるよ。
でね、詩音君のことなんだけど…
うん、そうなんだ。
うん。継がさ『そんな甘い匂いで誘っといて』って言ったらしいんだ…うん。
それで…そう、そう。
うん。えっ?…そうなんだ…
でね、番の匂いがしなくて、悲しみの匂いしかしないって。
…うん、そう。…うん。
わかった。うん、じゃあね。愛してるよ。」
目の前でいちゃつくな!くそっ。
「…継…残念だが…これといった解決策はない。」
「はあっ!?どうして???何で???」
「匂いがしないのは、極限状態だそうだ。
薬も効かない。というか、そもそも薬はない。」
「そんな…じゃあ、俺はどうしたらいいんだ?」
「ひたすら愛せ。『お前だけだ、お前しかいない』と。
篠山さんにも言われただろ?
こうなったら番の愛しか直せないんだ。」
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