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トラウマ⑧side :継

「何だよ…結局、悪いのは俺なのか…」 「何を今更。 だから“お子ちゃま”だって言われるんだよ! お前が余計なことさえ言わなければ」 「中田部長、社長も反省してますからこれ以上は…」 「そうだな…言い過ぎた。すまない、継。」 「…いや、いいんだ。本当のことだから。」 「社長、ゆっくり休暇を取って下さい。詩音様と、ご一緒に。 中田部長、水曜日まで…いいえ…来週一杯、詩音様はお休みです。 よろしいですね?」 「はい、そういうことなら…こちらのことは私に任せて下さい。 継、とにかく全身全霊で詩音君を愛するんだ。」 「…エッチはなしだろ?」 「うーん…そうだろうな。 いくら番でも、気持ちが伴わないと…ショックを起こしたらえらいことだ。」 俺はますます凹んできた。 やはり伊織さんの言う通りだ。 「とにかく…休暇をもらいます。 休んでばかりで申し訳ない…けど、俺にとっては詩音の心を取り戻せるかどうかの瀬戸際なんだ! よろしく頼みます…」 俺は二人に頭を下げた。 「社長…」 「継…頑張ってこいよ…」 俺は無言で頷いた。 愛しい伴侶の心をもう一度振り向かせるために! 俺は旅立つ! いざ行かん、温泉へ! とそこへ詩音からメッセージの返信が! え…昼は行けない!? マズい…距離を取られ始めた… 温泉だ!一刻も早く温泉に行ってまったりしなければ!! 妙な使命感に燃えた俺は、それから怒涛の勢いで一週間分の仕事をこなして、篠山さんを驚かせた。 「社長…あまりご無理をしては…」 「大丈夫!詩音のためだ!何でもできる!」 「はあ…承知致しました…」 そうこうしているうちに終業時間となり、愛する詩音がそろりと顔を出した。 「篠山さん、後のことは頼みます! よろしくお願いしますっ!」 「はい。ごゆっくりどうぞ。」

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