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いざ温泉①

「さぁ、詩音、出掛けるぞ!」 「え…どこへですか?」 「詩音…休みは温泉へって約束してただろ?」 「…あ…そうでしたね…」 「もう宿も取ってある。来週日曜まで俺達は休みだ。」 「ふえっ!?どうして?仕事…仕事は?」 「大丈夫だ。篠山さんと中田に頼んであるから。 さ、荷物を纏めて!早く早く!」 戸惑う詩音を宥めすかして荷物を作らせると、車に押し込んで出発した。 「…あの…継…」 「んー?どうした?」 「休んでばかりで…いいんですか? 継は社長だからいいけど、俺は一般の社員なんです! 入社したばかりで有休も付かないのに特別に付けてもらった挙句に、休んでばかりで… 他の社員達に示しがつきません!」 「法律でちゃんと認められてるからいいんだ。」 「それは…俺がΩだから…ですよね…」 はっ!しまった… 「みんなそれぞれに活用してるんだ。 詩音だけじゃない。」 詩音は黙ってしまった。 あぁ…またやってしまったか… 不穏な空気を吹き飛ばすように話題を無理矢理変えた。 「晩ご飯も楽しみだな。 温泉で詩音もゆっくりと身体を労わってくれ。」 と話しかけたが、詩音は上の空で窓の外をずっと眺めていた。 目元が潤んでいるのは気のせいなのだろうか。 その後はずっと黙ったままだった。 俺も泣きそうだ。 いや、めげてる場合ではない。 俺達の一生が掛かってるんだ。 気合いを入れ直してアクセルを踏み込んだ。

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