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いざ温泉④
詩音が寝たのを見計らってパソコンを立ち上げた。
時間がなくて、仕事中にザッと目を通しただけだったから、じっくりと検索していく。
《Ω番 拒否症候群》
番持ちのΩに現れる症状。
とてつもなく心身ともに疲労している時に、番の何気ない言葉や態度で傷付き、一般的には、Ωそのものを否定(=自己否定)してしまう。
その結果、番を拒否する行動を取る。
家事や仕事、子育てといった日常生活には、全く支障がない。
Ωを否定するため、その特徴のフェロモンを自ら封じ込めてしまい、匂いが出なくなってしまう。
逆に、番がどんなにフェロモンを出しても、感じることができなくなる。
感じるのは、恐怖・不安・悲しみ・怒り・絶望といった負の感情のみ。
本心は番を求めてやまないのに、その心にフィルターをかけているため、番の愛情表現を感じることができず、負の感情のみキャッチするので、ますます心を病んでいってしまう。
治療法としては、番の理解と愛情のみ。
適合する薬はない。その開発が急がれる。
どれも似たような説明だった。
…やはり俺のせいだった。
平気そうに見えたから安心していたのだが、とんでもない、詩音は極限まで疲労困憊 に陥っていたんだ。
頭を撫でながらキスをする。
ごめんな、詩音。
あんなことがあって平気でいられるはずないよな。
俺は最低な夫だ。
お前の心が戻ってくるまで、ずっと待ってるから。
ふと見ると、シーツが濡れている。
また泣きながら眠りについたのか…
きゅうっと胸が締め付けられる。
俺は電源を落とし、布団に滑り込むと、詩音をそっと抱き寄せた。
「愛してるよ、詩音。」
何度もささやきながら俺も眠りについた。
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