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いざ温泉⑥
僅かだが、詩音の匂いが戻ってきている。
ということは、俺の匂いも少しは感じてくれているのだろうか?
前途に光明を見出した。
希望が…見えてきた!
よし、ご飯の後は露天風呂だっ!
少し休んで…そうだ、この時間も大切にしないと。
「詩音!詩音、おいでー!」
胡座をかいた膝をポンポンと叩き両手を広げ
「詩音の座る場所はここだ。おいで!」
と呼ぶと、じりじりと寄ってきて、すとん と座った。
ふわん と香る詩音の甘い匂い…
あぁ、詩音!何て愛おしい…
背中から抱きしめて、愛の言葉をこれでもかとささやく。
「俺の大切な番の詩音…愛してるよ…もう離さないから覚悟して…
俺の匂いはいつもお前を包んでいるんだ。」
すりすりと頬に擦り付いて、キス。
くすぐったいのか、逃げようとする詩音を好きだ、愛してると抱きしめる。
本当に、大切なんだ。
お前だけ、いてくれたらいい。
ハグとキスを繰り返し、どさくさに紛れて露天風呂へ誘 う。
抗う隙も与えず、素っ裸にして朝風呂を楽しんだ。
朝日を浴びて煌めく詩音の素肌。
何て綺麗なんだ…心の声もダダ漏れで、撫でる手つきもきっといやらしい。
ここでも、好きだ愛してると際限なくささやいて、徐々に香り始めた詩音の匂いに歓喜していた。
先程から俺自身は、朝の生理現象も重なって固さを増している。
これはマズい。
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