197 / 829
なくなった香りside :詩音①
確かに『Ωだから誘う』と言われたようで、俺自身の存在を否定されたようで…悲しくて腹が立って、その感情が爆発しそうになった。
追いかけて来た継の顔を見るのも辛かった。
ただ、声もなく涙を流すだけだった。
俺の肩を抱き寄せ、あれこれ構ってくる継。
何か違和感を感じていた。
最初は風邪でも引いたのかと思っていた。
あんなことがあった後だから、メンタル的なものもあるのかと、ある意味 楽観視していた。
ところが
いつまでたっても、自分はおろか、継の匂いまでも感じなくなっていた。
感じるのは、戸惑いや不安、悲しみといった負の感情のみ。
俺からも継を思う匂いがしない…
どうして???
なぜ?なぜ?
いつもの甘狂おしいあの匂いがしない。
まさか…継の心が離れていった?
俺のこと…嫌いになった?
あんな奴らに簡単に攫われて、ひょっとして何かされた、身体を汚されたと思って嫌になった?
どうしよう…
焦れば焦るほど、継からは戸惑いの匂いしかしない。
一体どうなってしまったんだろう…
継に嫌われた…
匂いがしなくなるほどに
俺は
継に
嫌われてしまった…
あまりのショックで胸が張り裂けそうになった。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!