208 / 829
温泉で いちゃいちゃ②
そんなこんなで新婚らしい生活も送れてないし、結婚式だってまだだ。
婚姻届を出したから、法的にはもう夫夫なんだけど、継のご両親ともまだお会いしてないし。
完全に耳と尻尾が垂れた大型犬と化した継は、ちらちらと様子を窺うように俺を見ている。
抱きついて甘えていたいけれど、こんなに休んでばかりでは示しがつかない。
俺は心を鬼にして言った。
「じゃあ、今夜一泊したら明日の朝、帰りましょう。
それでそのまま式場に行って打ち合わせをして、翌日から仕事です!
継が嫌だと言うなら、俺だけ先に帰ります。
どうぞゆっくりして下さい。」
「詩音…そんなぁ…だって、篠山さんも中田部長も大丈夫だからのんびりしておいでって」
「あの方達は、あなたにとって部下だからです!
上司の言うことには逆らえないでしょ?
あなたのワガママに振り回される身にもなって下さいっ!」
「詩音厳しい…」
「『厳しい』って…俺だって言いたくて言ってるんじゃありませんっ!
公私の区別をつける経営者でいてほしいんです。
ただでさえ、俺のことで休んでばかりなのに…
俺も継に迷惑をかけないようにしますから。
ね?継…『新婚ボケ』なんて言われないように、しっかりしましょうね。」
「でも、詩音」
「俺だって、やっと仕事に慣れてきて、皆さんのサポートができるようになってきたんです。
入社したばかりなのに、プライベートなことで休んでばかりで…
発情期 に入ったら、また休まなくちゃならない…『当てにならない奴』だと思われるのは嫌なんです!
俺でも…俺みたいなのでも、少しでも社会に貢献できてるって思いたい。」
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!