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温泉で いちゃいちゃ②

そんなこんなで新婚らしい生活も送れてないし、結婚式だってまだだ。 婚姻届を出したから、法的にはもう夫夫なんだけど、継のご両親ともまだお会いしてないし。 完全に耳と尻尾が垂れた大型犬と化した継は、ちらちらと様子を窺うように俺を見ている。 抱きついて甘えていたいけれど、こんなに休んでばかりでは示しがつかない。 俺は心を鬼にして言った。 「じゃあ、今夜一泊したら明日の朝、帰りましょう。 それでそのまま式場に行って打ち合わせをして、翌日から仕事です! 継が嫌だと言うなら、俺だけ先に帰ります。 どうぞゆっくりして下さい。」 「詩音…そんなぁ…だって、篠山さんも中田部長も大丈夫だからのんびりしておいでって」 「あの方達は、あなたにとって部下だからです! 上司の言うことには逆らえないでしょ? あなたのワガママに振り回される身にもなって下さいっ!」 「詩音厳しい…」 「『厳しい』って…俺だって言いたくて言ってるんじゃありませんっ! 公私の区別をつける経営者でいてほしいんです。 ただでさえ、俺のことで休んでばかりなのに… 俺も継に迷惑をかけないようにしますから。 ね?継…『新婚ボケ』なんて言われないように、しっかりしましょうね。」 「でも、詩音」 「俺だって、やっと仕事に慣れてきて、皆さんのサポートができるようになってきたんです。 入社したばかりなのに、プライベートなことで休んでばかりで… 発情期(ヒート)に入ったら、また休まなくちゃならない…『当てにならない奴』だと思われるのは嫌なんです! 俺でも…俺みたいなのでも、少しでも社会に貢献できてるって思いたい。」

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