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温泉で いちゃいちゃ③

それでもなお、継は口説いてくる。 「だって、俺も気合い入れて頑張って、一週間分の仕事は終わらせてきたし、篠山さんからも中田部長からも『ごゆっくり』って言われて快く送り出してもらったし…」 「だ・か・ら! 継はそのまま、ゆっくりして下さいっ! 俺は明日の朝、帰りますっ。」 「しーおーん…」 今にも泣き出しそうな顔の継。 これだけ啖呵を切ってしまった俺は、もう引っ込みがつかなくなった。 以前に『じゃじゃ馬だ』と言われたが、今もきっと『融通の利かないじゃじゃ馬だ』と思っているに違いない。 どうしようもなくて、ふいっ と横を向いた俺を見て、継は大きなため息をついた。 そして、携帯を手に取ると、どこかへ連絡し始めた。 「あ、お疲れ様です。 えぇ、大丈夫です。本当にありがとう。 仕事は? そう、よかった。じゃあ、予定通りで大丈夫ですね? ご迷惑かけますけど、よろしくお願いします。 あ、悪いんだけど、このまま中田部長に電話回してくれませんか? うん、そう。 あ、部長?お疲れ様です。 あぁ…ありがとう。(おく)さんにもよろしく伝えてくれ。 ところで、そっちの仕事だけど… うん、うん…そうなんだよ… え?そうか…うん、うん。 あぁ、そうだな。そうしてもらえるとありがたい。 うん、わかった。じゃあ、よろしく頼みます。 え?お土産? ははっ!わかってるよ。何か美味いもの買って帰るよ。 うん。よろしく!」 電話を切った継は、俺を膝に抱き上げ向き合うように座らせると 「聞いてただろ?何も支障はない。 お前の仕事は、特に急ぎのものはないから、予定通り休んで構わないと。 その代わり、お土産を買ってこいと言われたよ。」 諭すように言われ、じっと見つめられる。

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