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温泉で いちゃいちゃ④
口を真一文字に結び、軽く睨んでいる俺に
「ほら、そんな顔しない。美人が台無しになるぞ?
うちの社員は優秀で思いやりがあって、俺達のことを本当に考えてくれてる。
あんな事件に巻き込まれて、普通なら最低でも一カ月くらいは自宅療養しなければならないのに、お前は無理してすぐ普通の生活をしようとしてるだろ?
確かにお前のお陰で、世間のΩ達も怯えて暮らさなくても良くなった。
けれど、今でもフラッシュバックすることもあるじゃないか。
自分の身体のことを一番に考えてくれ。
篠山さんも中田部長も他の社員達も柚月君も、皆んなお前が心配で大切なんだ。
俺がもっと気遣ってやればよかった…ごめん。
全力でお前を守りサポートするから。
とにかく、今は俺の言うことを聞いて、ここで癒されてくれないか?
俺に甘えろ、詩音。
あ…身体の癒しは保証しないが…」
継の言う通り、時々あの時の恐怖が蘇ることがある。
そんな時は抱きしめられて継の匂いに包まれては、平静に戻っていく。
普通の状態ではないことも自覚していた。
だから、病院にも定期的に通ってるから大丈夫だたら思い込んでいた。
ネットで調べたように、自分は気付かなかったけれど、心身共に衰弱してるところへ何気ない継の言葉に反応して、今回のように新たな病気を発症してしまったんだ。
甘えていいんだ。
ワガママも…言ってもいい?
継の最後の台詞はちょっと怖いけど、俺を求めてくれるなら…うれしい。
軽く睨んだまま
「甘えて…ワガママも言ってもいいですか?」
瞬間、顔をくしゃりと歪ませた継は、俺を力一杯抱きしめると
「お前の言うことなら何でも聞いてやる。」
と、長い長いキスをした。
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