219 / 829
ご対面③
「詩音?何言ってんだ?
詩音は美人だし、料理も上手で家のことも手早くしてくれてるだろ?
そして何よりも俺を愛してくれてる。それが俺の活力にもなり、お前の存在そのものが俺の生活の全てなんだぞ?
お袋はそんなこと思わないよ。」
継は、ちゅ、ちゅ と唇に軽いキスをすると
「そんなに不安なら…」
と俺の身体を弄り始めたので、慌てて継の膝から逃げ出した。
油断も隙もありゃしない。
性欲の塊と化したα。匂いもいつもより濃い。
もしかして…発情期 ?
一緒にいると、俺の身が持たない。
キッチンに逃げ込んで籠城する。
「…詩音…」
じりじりと壁に追い詰められる。
継の目は既にギラギラと光り、獲物を追い詰めた猛獣のようだ。
「継!もう、ホントに無理だからっ!」
「…何が無理なの?言ってごらん?」
見つめられながら両手首をそっと握られて、頭の上に固定された。
獲物を狩る肉食獣。いつもの継じゃない。
外そうと対抗するけど、ビクともしない。
怖いっ。
「継!嫌っ!離してっ!どうしてこんなことするの?
嫌っ!離してって!」
「俺は何もしてないよ…手を握ってるだけ。
なのに…どうしてそんなに嫌がるの?」
「だから!何でこんな拘束するの?
俺、継に何かした?離してって言ってるじゃない!
こんなの…嫌っ!継なんか大っ嫌い!!!」
俺の言葉にハッと正気に戻った継はすぐに手を離し
「ごめんっ!詩音、ごめんっ!…怖かったよな…
発情期…近いのかも。
いつにも増してお前とずっといたから、 αの本能が出てしまったかもしれない。
怖がらせてごめん…そんな、俺を拒絶する目をしないで。
…薬飲んでくる…」
身体の力が抜けて、ズルズルと床にへたり込んだ。
初めて…継を怖いと思ってしまった…
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!