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ご対面⑤
『食べさせ合う』という側 から見たら何とも目のやり場に困るであろう行為で、随分と時間を掛け、すっかりお腹も心も満たされた俺達は、二人でこれまた仲良く片付けを済ませた後、俺は継に後ろからすっぽりと包まれて座った。
何も言わなくてもお互いを思う匂いが部屋中に広がっている。
「結婚式なんだけど」
継が口を開いた。
「最初にお願いした通り、身内で祝いたいと思ってる。」
俺は頷いた。
特別仲の良い友達もいないし、会社関係ならとんでもない人数になる。
「継の対外的なこと…会社関係はいいのですか?
ご両親は…何て仰ってるんですか?」
「詩音のご両親とも相談して、内輪の式にしようと話がほぼ決定している。
詩音は本当にそれでいいのか?
誰か呼びたい人はいないのか?」
「俺は…華やかなのは苦手で…それに特に親しい人もいないし。
本当は…式も恥ずかしいくらいです。」
継は俺の髪の毛を撫でながら
「お前は本当にシャイだな…まぁ、そこもかわいいんだけど。
明日、お前のご両親に正式にご挨拶した後、式場に行って打ち合わせをしよう。
衣装も決めてこないとな。」
そう言って覗き込んできたかと思うと、喉元にキスしてきた。
思わずびくっと身体が跳ねた。
「詩音…そんなかわいい反応されたら…俺はまた…」
俺は身体を捻って継を見つめると
「明日動けなくしたいんですか?
俺は嫌ですよ。せっかくご両親にお会いできるのに。
今日はお預けです!」
そう宣言すると継は、がっくりと項垂れて
「…うん、わかってる…わかってるよ。
わかってるんだけど…」
「じゃあ、わかって下さいねっ!」
「…しーおーんー…」
顔を見合わせてくすくす笑い合う。
少し涙目の継がかわいらしくて仕方がない。
キスを交わして大人しく眠りについた。
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