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ご対面⑥
気持ちよく晴れた朝。
カーテンの隙間から明るい日差しが差し込んでいた。
俺を抱きしめて眠っていた腕から抜け出そうとしたら、継が目を覚ましてしまった。
「詩音、おはよう。もう少し、ここにいて。」
「おはようございます、継。
でも、支度しないと遅れちゃいますよ。」
「…んー…ちょっとだけ詩音を充電させて。」
そう言うと、継は俺を布団に引き戻して抱きしめてきた。
「…継…早くしないと…」
「もうちょっと…」
「継!」
渋々、抱きしめる腕を緩めた継は、頬を膨らませて
「もう少しくらいいいじゃないか。」
とブツブツ文句を言う。
時々子供みたいに甘える彼を愛おしく思いながらも、今日は継のご両親と会うと考えるだけで緊張していた。
「詩音…そんなに緊張しなくても大丈夫だから。」
「俺にとっては大事なことです!
“こんな嫁貰うつもりじゃなかった”ってガッガリされるのは嫌ですから!」
「そんなこと言う訳ないだろ?」
いつになく俺からピリピリした匂いが出ているのを感じたのか、継はそれ以上何も言わなかった。
黙ったまま簡単な朝食を済ませ、継が選んだスーツを着て準備を済ませると、継は玄関でそっと手を繋いできた。
ふと見上げると、優しい瞳で見つめられた。
おでこにキスを一つ、ふわりと香るいつもの匂い。
それだけで少し落ち着いた。
「さあ、行こうか。」
今から長いお付き合いになるのに、こんなに緊張してどうするんだ。
自分を叱咤激励して継の実家へと向かった。
「ここ…継のお家ですか?」
思わずごくんと唾を飲み込んだ。
門から玄関までどのくらいある?
どこかの要人の大豪邸?
「ただいまー!」
継の声を合図に門が開いた。
もう後戻りはできない…やだ、帰りたい…
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