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麻生田家③
「お袋、相変わらずだな。」
「あぁ本当に。兄貴、右京さん、おめでとう!
赤ちゃんも喜んでるってさ。」
「え!?あ、そうか!確か詩音君は嗅覚が…
右京は視覚…人の感情が色で見えるんだ。」
「え!?右京さんも!?まさか…右京さんもスーパーΩなんですか?」
マジマジと右京さんを見てしまった。
俺と同じスーパーΩで、超感覚の持ち主…
何だか…ホッとした。
自分と同じような境遇の人とこんな間近で出会えるなんて…
「詩音君、今までずっと辛いこととかあったんでしょう?
頑張ってきて偉かったね…
継君に言えないこととかあったら、これからは俺が相談に乗るから。
あ!もちろんお義母さんもだよ。
俺も、いつもお義母さんに何でも相談してるんだ。」
視線を感じて前を向くと、テーブルの向こう側で、出掛ける準備万端のお義母さんが頷いてにこにこ笑っている。
「俺を…俺を受け入れてくれる家族が増えたんですね…」
ポツリと呟くと、継を押し退けてお義母さんが抱きしめてきた。
「そうだよ!ここは詩音君のもう一つの実家。
いつでも好きな時に帰っておいで。
継が何かやらかしたらすぐにいらっしゃい。
締め出して入れてやらないから!」
そう言うと、継にあっかんべーをして俺をぎゅうぎゅう抱きしめた。
「お袋っ!詩音は俺のだから返して!」
お義母さんから、べりっと引き剥がされるように継に奪い取られて、また抱きとめられた。
それを見ていたお義父さんが
「ほらほら、いい加減にしなさい。
詩音君が困ってるじゃないか。
そろそろ出掛けるぞ。
そんな奪い合いをするのなら、俺が貰い受けようかな。」
「「だめぇーーっ!!!」」
その後は大爆笑のまま、継の実家を後にして、みんなで昼食を済ませたのだが、やはりというか緊張して味がわからなかった。
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