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両家揃い踏み②

玄関の外では両親がスタンバイして待っていた。 見慣れた顔なのに、ちょっと離れていただけなのに…何だかもう、他所(よそ)の人達になってしまった雰囲気がする。 俺はもう、麻生田家の人間になったのかな… お義父さんとお義母さんが車を降りて駆け寄り 「お忙しい中、お時間を取っていただいてありがとうございます。 ご挨拶がすっかり遅くなって申し訳ありませんでした。」 「いいえ、とんでもない!お疲れのところ わざわざお越し下さりありがとうございます。 さあ、どうぞ!」 「「失礼致します。」」 「継君も、さあ!…詩音、お帰り。」 「はい、失礼致します。」 「ただいま。」 家の作りも中の家具も一緒なのに、もうどこかが違っている。 あぁ…俺が住んでいた頃の家じゃないんだな… 纏う空気が、俺のモノではなくなっていて、何だかちょっぴり切なくなった。 「詩音?」 俺の微妙な匂いに気付いた継が心配そうに声を掛けた。 「ううん、何でもない。大丈夫。」 何でもないよ、と微笑んで継の後をついて行った。 床の間には三宝に乗せられた結納品がずらりと並び、俺は本当に結婚したんだなと改めて実感した。 全員揃ったところでお義父さんが切り出した。 「この度は勝手に話を進めて申し訳ありませんでした。 大切な息子さんをいただくのに親が不在で…不義理をかいて誠に申し訳ありませんでした。」 「いいえ…そんな…継君が仲人さんと一緒に来て下さいましたし、直接海外からも何度もお電話頂戴しましたから… うちの詩音とご縁を結んで下さって、こちらがお礼を申し上げたい。 本当にありがとうございました。」 「それともう一つ、謝罪しなければならないことが…」 「…何でしょうか?」 お義父さん!?何を謝るの?

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