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両家揃い踏み⑥
「うわぁ…こんなにあるの?
継、ここから選ぶんですか?どうしよう…」
ズラリと並んだ衣装に圧倒され、縋るように継を見ると
「俺が詩音に似合うやつを選んでやるよ。」
と言われ、ホッとした。
「詩音は白がいいと思うんだ。
俺もそれに合わせて白。
そうだな…ここら辺の…すみません、何着か着てみてもいいですか?」
スタッフさんを呼んで、何着か取っ替え引っ換え着させられた。
その度に継は
「おおっ、詩音、綺麗だぞ!」
「うーん、これもいいな…詩音の美しさが映える!」
「腰の細さが際立って…エロいなぁ…」
とか褒めちぎるので、居たたまれなくて、俺はもう早く帰りたくて堪らなかった。
最終的に、継の選んだ物とバランスのいい一着が見つかり、それに決めた。
スーツ一着決めるのに、こんなに気を張って大騒動になるとは。
結婚式って大変なんだ…と今更ながら実感する。
応接間に戻ると、継の考えていた通りのプランでいいと、お互いの両親も太鼓判で、俺達もホッとした。
本当にここで式を挙げるんだ…。
今までぼんやりとしか想像してなかったそれが、現実のものとなって少し怖くなった。
そんな俺の匂いに気付いた継が、そっと俺の手を握ってくれた。
思わず見上げると「大丈夫」と口パクで言われ、頷いて手を握り返した。
いろいろと細かいことを詰めた打ち合わせもできて、後は当日を待つだけということで、式場を後にした。
「私達までご一緒させていただいてありがとうございました。
詩音、よかったな。」
「はい!当日もよろしくお願い致します。
兄さん達にもよろしく伝えて下さい。」
「あぁ。みんな楽しみにしてるよ!
麻生田さん、継君、どうぞよろしくお願い致します。」
「はい、こちらこそ。今日は本当にありがとうございました。では…」
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