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右京さん①

「たっだいまぁー!右京君、いい子にしてた?」 「お帰りなさーい! お義母さん…俺、小学生じゃないですよ!ふふっ。」 「あははっ!つい…ね? さぁ、美味しいもの作るから潤達と座ってて! 今日は詩音君にお手伝いしてもらうから。 あ、また今度からこき使っちゃうぞ!」 「ふふっ。お母さん…俺まだ悪阻もないし、全然大丈夫なのに… じゃあ、今日は詩音君にお任せして…待ってまーす!」 右京さんはひらひらと手を振り、俺に「お願いね」と笑いながら言ってリビングに戻って行った。 この人も甘やかで優しい匂い。 俺の周りに邪気のない優しい香りの人が増えている。 きっと…継と番になったお陰だ。 お義母さんが俺にエプロンを手渡しながら言った。 「詩音君、これ、使ってね。 いきなりでごめんね。でも俺一人だと大変だから助かるよ。 あ、ナスとオクラあと諸々、適当でいいから切ってくれる? 俺はサラダと唐揚げの準備をしていくから!」 スペースを空けてくれて、並んで調理していく。 お義母さん…ずっと、すっごいうれしそうな匂いがしている。 俺と一緒にいるの、うれしいのかな… ぽとり あれ? ぽとっ…手の甲に冷たいものが… 「詩音君?」 お義母さんに顔を覗き込まれて、もう限界だった。 「ごっ、ごめんなさいっ…悲しいんじゃ、ないんですっ! 俺なんか、俺なんかを受け入れてくれて…うれしくって…ひっく。」 そっと抱き寄せられて、ぽんぽんと頭を撫でられた。 「よしよし。うちのお嫁ちゃん達は、二人とも泣き虫だ!あははっ! かわいいなぁ… もう、何も心配いらないからね…」 二人とも?右京さんも?

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