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右京さん⑤
お腹一杯で大の字になった三匹の狼達を放っておいて、俺達嫁チームは片付けを始めた。
「あー、美味しかった…お義母さん、ご馳走様でした。
悪阻になったら、しばらくこの料理ともお別れか…」
右京さんが寂しそうに言うと、お義母さんが
「食べれる物を作ってあげるよ!
それより安定期に入るまで無理しちゃダメだよ。
嫌でなければ、ここにしばらくいるといい。
潤とも相談して、よければいらっしゃい。
その方が安心だな。」
「ありがとうございます!
じゃあ、潤にも聞いてみますね。」
「うん。遠慮しなくていいから。ね?」
「はい。
詩音君、俺さ…両親も兄弟もいないんだ。だから、身内で頼るところがないの。
ここしか…お義父さんとお義母さんしか甘える人がいないんだ。」
「え?」
「施設で育ったの。Ωってわかった途端に捨てられたらしい。」
突然の右京さんの告白に、俺はびっくりしてお皿を拭く手を止めてしまった。
「辛かったな…でも、俺はスーパーΩだったから、国から手厚く守られてたし、手を出す奴もいなくて、その点は助かった。
大学も行けたけど、あ、その頃にはもう施設を出て一人暮らしをしててさ、花屋に就職できて普通に働けた。
いくら友達がいても、同僚がいても、身内がいないっていうのは、何とも言えないよ。
どんな両親で、どういう風に育って…全然わからない。
もし、もし会えたら聞きたいことが一つだけあるんだ…
『俺を授かった時うれしかったですか』って。
潤と初めて会った時、雷に打たれたみたいに動けなくなった。ま、実際に打たれたことないけどね。
すぐにわかった。運命の番だと。
だから身体を繋ぐことには割と抵抗はなかったんだけど、アイツいきなり頸をガチ噛みするんだぜ?」
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