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右京さん⑥
くっくっ と喉を鳴らして右京さんが笑う。
「流石にパニックになったよ。
『何てことしてくれたんだ!
アンタらαにはお遊びだろうけど、俺達Ωは頸を噛まれたら終わりなんだ!!』
って泣いて暴れまくった。
噛んだ潤もオロオロして
『そんなつもりはない』
『君は俺の運命の番だから結婚しよう』
『大切にするから泣かないで』
って、必死になっててさ。
それで、その足で俺を引っ立てて役所に行ったかと思うと、その場で婚姻届を書いて、慌てて追いかけてきた俺のSPに証人になってもらって、届出しちゃったんだ。
バカだろ?アイツ。
どこの誰ともわからない俺と結婚しちゃったんだよ!?
で、お義父さんお義母さんと継君を呼び出して
『俺、今日、コイツと結婚しました!
運命の番で…今日会って頸噛んじまってさぁ…
名前は…お前の名前、何だったっけ!?』
って言ったもんだから、お義母さん、物も言わずに潤を投げ飛ばして馬乗りになって、ボッコボコに殴り倒したんだ。
俺はもちろん、一緒にいたお義父さんも継君も、お義母さんのあまりの怒り様に止めに入るのも忘れて、ぼぉーって見てるだけだったんだ。
潤は殴られ続けて、元の顔がわかんないくらいに腫れ上がった顔になってた。
お義母さんは俺の前に正座して
『うちのバカ息子がとんでもないことを!
本当に、本当に…どれだけ謝っても、謝りきれないっ!
ごめんなさいっ、ごめなさいっ…』
って土下座までしてひたすら謝ってくれた。
お義父さんも。継君も。
そこで初めて俺自身のことを洗いざらい聞いてもらって、潤やお家のことも聞いて…」
そこまで話すと右京さんは、ふうっ と大きく息をついた。
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