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右京さん⑦
「そんな滅茶苦茶な出会いで、いきなり“嫁です”って現れた俺に、お義父さんもお義母さんも継君も…当たり前のように迎え入れてくれたんだ。
お義母さんは最初から言ってくれてたんだ。
『本当の親だと思って言いたいこと言えばいいし、甘えてきなさい。遠慮はなしにしよう。
俺もそうするから。』って。
だからね。
俺も言いたいこと言って甘えて、やりたい放題させてもらってる。
さっきはごめんね。
その癖で、ぽろっと言葉が出ちゃって傷付けちゃった。
でも、詩音君にも裏表なく本音で接したいし、そうであってほしい。
潤との恋愛は入籍したその日から始まったんだ。
日毎に好きになって、今では…潤がいないと生きて行けなくなっちゃった。
本当は一人でずっと生きていこうって思ってたんだよ。
こんな自分でも、愛する人ができたんだって不思議な気もするけど。
俺はこの子が出来た時に、とっても…うれしかった。
愛する人との絆が深まって守るものが増えて。
俺、潤と結ばれて…
ここの家の嫁になれて…
本当によかった。
こんなに幸せで、幸せ過ぎて怖いくらい。
詩音君…
君もどうか幸せになって…」
俺は右京さんの話を聞きながら、またポロポロ涙を零していた。
右京さんの穏やかな慈愛の匂いに包まれる。
そして、更に濃厚な情愛の匂い…お義母さん!
お義母さんは俺達二人をそっと抱きしめると
「辛い想いをした分、幸せになれるんだ。
右京君も詩音君も、今からの人生を精一杯楽しんで生きるんだよ!
潤や継が何かやらかしたら、すぐに言いなさい。締め上げてやるから。」
「「お義母さーん!」」
三人で抱き合ってえぐえぐと泣いて笑って、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった。
またお義母さんに顔を拭いてもらって、急いで片付けを済ませたのだった。
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