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ヤキモチ焼きの獣④

「詩音…」 継が俺を抱きしめる。 擦れ合う素肌が熱い。纏わりつく継のフェロモン。 尾てい骨に継の熱く固い楔が当たって、何とも落ち着かない。 それに反応しかけている自分も恥ずかしい。 「継は俺の愛する大切な旦那様で、かけがえのない運命の番です。 …もっと言わないとわかりませんか?」 「…ちゃんとたくさん言ってくれないとわからない。」 あ…甘えたモード? ちょっと照れてる。 ふふっ。いつもの俺様継もいいけど、こんな甘えたさんの継もかわいいな。 二人だけが知ってるのって…こういうのかな? きっと俺だけに見せる姿のはず。 首にきゅっと腕を巻きつけて、耳元でささやいた。 「継…継が俺を愛してくれてるように、俺も…ううん、それ以上に継を愛しています。 俺を選んでくれて、俺を番にしてくれて、ありがとうございます。 継が心配するようなことは絶対にありませんよ。 俺には継だけですから。 でも、お義母さんや右京さんと仲良くするのは許して下さいね?」 その頃にはもう、継の目尻が下がって、顔が緩んででろでろになっていた。 なーんだ。 「愛してる」って言ってほしかったのか。 あんなことでヤキモチ焼くなんて。 それも自分のお母さんと、お義兄(ねえ)さんだよ? 継、案外お子ちゃまなの? どんだけ俺のこと…好きなの? うっわー…自分で考えて恥ずかしい… ん?何だか…身体が火照ってくる。 …継の手が俺の身体を(まさぐ)ってる! 「ちょっと…継…」 咎めるような口調で名前を呼ぶと 「お前をたっぷりと愛したい…詩音…抱きたい…」 艶を含んだ声音に心臓が暴れ出した。 二人を包む甘い匂いが濃くなっている。

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