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家出人②
えっ!?
二人で顔を見合わせて固まった。
こんな朝早くからの訪問者…誰っ!?
ピンポーーーン
ピンポーーーン
ピンポーーーン
鳴り止まない…怖い…誰!?
「詩音、待ってて…」
一体誰だよ…とブツブツ言いながら、髪の毛にキスを残した継がインターホンの画面を見に行った。
俺は自分のバスローブを羽織り、継の分を拾い上げて追いつくと、受話器を取ったその肩にバスローブを掛けた。
「はいはい…って、お袋ーーーっ!?
何でこんな時間に!?」
「…継、ごめん…開けて…」
お義母さんっ!?
「…わかったよ…今開けるから。」
振り向いて
「詩音、ごめん。お袋だ。」
「えっ。着替えなきゃっ!」
継はオートロックを解除し、鍵を開けに玄関へ。
俺は慌てて着替えるために寝室へ飛び込んだ。
「こんな時間にごめんなさい…でも、行くとこなくて…」
大きなトランクを横に置いて、申し訳なさそうに、ソファーにちょこんと座ったお義母さん。
その目は心なしか赤い。それに少し腫れてるみたい。
「その荷物、どうしたの?
家 は?親父は?」
継が尋ねた途端に、お義母さんはポロポロと大粒の涙を零し始めた。
「お義母さんっ!?」
俺はオロオロしながらも、お義母さんの元に駆け寄り、膝の上で固く握られた両手をそっと包んだ。
「…うっ、うえっ…パパが、パパが…
浮気したぁーーーっ!!!
うえっ、うえっ…うわぁーーーん」
ええっ!?浮気!?
「そんな…だってお義母さんのこと、あんなに一途に愛してるって…
何かの間違いじゃないんですか?」
俺と継は顔を見合わせて困惑していた。
お義母さんは、えぐえぐと泣き続ける。
俺は子供のように号泣するお義母さんの背中を撫でながら、どうしたものかと思案に暮れていた。
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